GMFCS:粗大運動能力分類システムの使用方法

GMFCSとは?

・Gross Motor Function Classification System

➡ (脳性麻痺児の)粗大運動能力分類システム

 
 
移動などの粗大運動能力は「GMFCS」、対象物の手指操作能力は「MACS」で分類するよ。他にもコミュニケーション能力を分類できるCFCS」といのもあるよ。
 

・GMFCSは座位や歩行車椅子移動に焦点を当て、本人の自発的な運動に基づいて5つのレベル(レベルⅠ~Ⅴ)で分類する尺度です。

5つのレベル?

対象年齢と特徴

・対象年齢:0歳~18歳

・GMFCS-E&Rには、5つの年齢層(2歳未満、2〜4歳、4〜6歳、6〜12歳、および12〜18歳)があります。

・GMFCS-E&R(2007)から、「12歳から18歳」までの青少年の年齢帯を分類できるようになりました。


・どのGMFCSレベルが「子どもの粗大運動能力の限界を最もよく表しているか」を判別します。

・子どもが家や学校、地域社会において、普段どのようなことを遂行しているか(できているか)を重視して評価します。

 
 
予後予測」で、レベルを判断しないように注意しよう。

「6~12歳」と「12~18歳」の2つの年齢帯では、移動手段に対する環境的要因(学校や地域社会での距離など)、個人的要因(エネルギー必要量や社会的な嗜好など)潜在的な影響が反映されるため、評定時に注意が必要です。

検査者は?

医師をはじめ、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)および脳性麻痺児の運動能力に精通している他の医療サービス従事者が使用可能です。

 
 
医師とPT・OTは、GMFCSの基準をしっかり読むことで、トレーニングなしでGMFCSを使えるよ
 
 
ただ、職場の先輩と一緒に何度も経験してからにしようね。あと、「6歳~12歳」まで脳性麻痺のある子どもの保護者は、GMFCS – E&Rを使用して、子どもを正確に分類できるという報告もあるよ。
 
 
普段からお子さんをみられているお母さんお父さんだからだね。

実施方法

近藤和泉らの「GMFCS – E & R粗大運動能力分類システム拡張・改訂されたもの」を参照し、各レベルの項目を熟読し、対象児に当てはまるレベルを検討する。

*特定のGMFCSレベルの記載事項を遂行できない子どもは、そのレベルより下のレベルに分類されます。

 

 
 
GMFCS – E&R は個人的・非商業的な使用であれば、無償でダウンロードすることが可能だよ。とてもありがたいなぁ。

レベルの判別

・必ずしも観察が必要なわけではなく、子どもの現在の粗大運動能力の一般的な理解に基づいて分類を行うことができます。

・家庭、学校、地域社会における子どもの普段の遂行能力や、粗大運動能力の制限についての情報は、親・保護者との面接、または粗大運動能力が記載された最近のカルテ情報から入手する場合もあります。

・レベル間の区別は、手に持つ移動器具の使用や、手動および電動車椅子などの支援機器の必要性などに基づいて行われます。

 
 
手に持つ移動器具は…クラッチ、杖、歩行中に体幹を支えない(前方型及び後方型の)歩行器のことだよ。

 

 
 
AFOなどの装具をつけて歩けているお子さんであれば、歩行は自立できていると考えるよ。国家試験にも出たことがあったような。
 
 
 
4〜6歳」の年齢帯における「レベルⅢ」−「レベルⅣ」間の判定で迷ったときは、「大人の介助によって、階段を登れるかどうか」で判断するよ。

使用時の注意点

見込みを含めず現在の粗大運動能力(坐位や移動の能力)に基づいて分類を行います。

・各レベルの項目に完全に一致しない場合であっても最も合うレベルを選択します。


 
 
2歳未満の子どもに使用する際の注意点は何だろう?
 
 
2歳未満だと、レベル判定が不確実になる可能性があるよ。だから、2歳以降再評価(再分類)をするようにしよう。
 
 
なるほど。急がなくても良いんだね
 
 
うん。あと2歳で思い出したけど、2歳以下の早産児(低出生体重児)の場合は、修正月齢で評定するようにしてね。
 
 
 
修正月齢…?
 
 
「修正月齢」は、実際に生まれた日ではなく、元々の出産予定日から数えた月齢のことだよ。

その他

・GMFCSはカナダで考案され、他の言語に翻訳されたバージョンの信頼性のデータも報告されています。

・2000年~日本ではGMFCS の出現により、これまで恣意的に決められてきた脳性麻痺児の運動障害の特徴が統一され、専門職間での重症度認識の差異が減りました

・ 他の判別的尺度である脳性麻痺児の手指操作能力分類システム(MACS)との関連性も検討されています。

GMFCSに対する私見

・GMFCSは養成校の講義で必ず習うと思いますし、国家試験にも頻出している尺度なので、コメディカルの方であればほとんどの方が聞いたことはあると思います。

・私の経験してきた臨床場面では、すてにドクターが分類していたり、カルテに記載があったりすることが多く、自分でGMFCSを使うのは研究で被験者のデータを整理したり、初来院時(初回リハ時)の情報共有として提示したりするくらいでした。

・他の検査や尺度と違って、あくまで分類システムという要素が強く、GMFCSだけで判断することはないと言っても過言ではないと思います。

・他の使用していたものとして、日常生活場面の遂行評価としてPEDIやAMPS、生活の現状把握のためWee-FIM、学校との連携のために適応行動や不適応行動をまとめるため、Vineland-ⅡやCBCL、粗大運動能力をスコアとして考えるためGMFM、筋緊張や変形に対する評価、動作の観察評価などでした。まだまだほかにも臨機応変に使用することがあります。

※あくまで私的な考えです。


国家試験対策としては、GMFCSが頭に入っていてなければ解けない問題もあるため、覚えておいてくださいね。

・毎年、脳性麻痺関係の問題は理学療法士・作業療法士は必ず出ています。

・近年の国試傾向的には、単に設問からGMFCSレベルを答えさせるだけといった問題ではなく、5つの各年齢域ごとに具体的な文言が頭に入っていないと解けないような問題もみられ始めているように思います。

・この記事を少しでも参考にしていただければ幸いです。

・今後、国試対策としても脳性麻痺関連をまとめていきたいと思っています。

※使用方法などの詳細については、下記の文献をお読みください。

<参考文献>
・GMFCS - E & R © Robert Palisano, Peter Rosenbaum, Doreen Bartlett, Michael Livingston, 2007
・CanChild Centre for Childhood Disability Research, McMaster University GMFCS © Robert Palisano, Peter Rosenbaum, Stephen Walter, Dianne Russell, Ellen Wood, Barbara Galuppi, 1997
・CanChild Centre for Childhood Disability Research, McMaster University (Reference: Dev Med Child Neurol 1997;39:214-223
・近藤和泉,藪中良彦,楠本敬二:GMFCS - E & R粗大運動能力分類システム拡張・改訂されたもの(藤田衛生大学 日本語版)
・Kondo I, et al.: Reliability study of Gross Motor Function Classification System and Delphi survey of expert opinion for clinical use of this system in Japan. Jpn J Rehabil Med 46: 519-526, 2009.
・藪中良彦,園田茂,近藤和泉,川原田里美: 粗大運動能力分類システム(GMFCS)レビュー:信頼性,妥当性,有効性.総合リハ 38(8): 779-783, 2010.
・日本リハビリテーション医学会・監:脳性麻痺リハビリテーションガイドライン 第2版,金原出版,2014
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