PEDI:リハビリテーションのための子どもの能力低下評価法の使用方法

PEDIとは?

▶ Pediatric Evaluation of Disability Inventory(PEDI)

子どもの日常生活場面での遂行能力を評価できます。

対象年齢(0.5~7.5歳を超えていても、定型発達の7歳児より遂行能力が低い子どもであれば、評価を行うことは可能です。

・PEDIは<セルフケア><移動><社会機能>3つの領域について、遂行能力を測定することが可能なアセスメントです。

 
 
理学療法士の国家試験にもよく出るアセスメントだね。

評価の特徴

・新しく子どものリハビリ介入する際に、「どの遂行領域にアプローチしていく必要があるか」を特定・計画する一助となります。

・子どもの治療の進捗状況介入の効果などを調べることが可能です。

 
理学療法や作業療法、言語聴覚療法などのリハビリ部門でよく使用されている評価らしいね。
 
そうだね。あとは入院から退院にかけて、子どもの機能的変化をスコアで評定できるよ。

使用方法

日常生活場面における<セルフケア><移動><社会的機能>という3領域の遂行能力を、3つの<測定尺度>によって評価します。

インタビューを行う相手は、対象児をよく知る保護者や家族、担当セラピスト、学校の担任の先生など、様々な関係者による専門的な意見・判断を組み合わせて、スコアを判定することが重要です。

*アセスメントを正確に行うためには、PEDIの実施ガイドラインや採点基準、事例報告などを熟読の上、事前に練習を行う必要があります。

対象年齢と所用時間

・生後6ヶ月から7歳6か月

*対象年齢を超えていても、定型発達の7歳児と比較し、対象児が低い遂行能力であると推測されるならば、PEDIを実施することは可能です

・所要時間としては、45~60分程度必要とされています。

 
 
WeeFIMは15分程度だよ

対象疾患

脳性麻(CP)、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、遺伝子疾患(ダウン症候群などの染色体異常を含む)、二分脊椎等の整形疾患など、評価対象となる疾患は多岐にわたります。

・日本においてはCP児に対して使用されることが多いです。

遂行能力の3領域

(1)セルフケア領域

▷ 食事(食物形態、食器、飲料容器)、整容や清拭(歯磨き、鼻のケア、手・身体・顔を洗う)、更衣(上衣、下衣、ボタンやジッパー等の留め具、靴や靴下)、トイレ(動作、排尿・排便の管理)について


(2)移乗領域

▷ トイレ移乗、椅子や車椅子への移乗、ベッド移乗、浴槽移乗、車への移乗、階段昇降、屋内の移動(距離、速度、路面、運搬など)


(3)社会的機能領域

▷ 言葉や文章の理解、コミュニケーション関係、問題への対応、人との交流、時間管理、自己防衛など

 

 
各領域は独立しているから、1つの領域のみを評定してスコアを出すことも可能だよ。

3つの<測定尺度>

①機能的測定尺度

197項目の機能的スキルが含まれています。

▶ 個々の機能的スキルに関する子どもの現在の能力を評定することができます。

▶ 各項目の遂行能力を、0点(できない)、1点(できるで評定していきます。

0点

ほとんどの場面でその項目を遂行することができない、または能力が制限されている。

1点

ほとんどの場面でその項目を遂行することができる、またはすでにマスターした項目で、機能的スキルはこの項目よりも進んでいる。


②介護者による介助尺度

20項目の複合した(複雑な)機能的活動が含まれています。

▶ 項目はセルフケア(8項目)、移動(7項目)、調整(5項目)の計20項目あります。

▶ より複雑な機能的活動の際に、子どもに提供される日常的な介助量について評定していきます。

▶ 各項目の支援レベルは、0~5点(全介助~自立)で評価されます。

0点
全介助

介護者が活動のほとんど/全てを行う。

子どもは意味のある手伝いをしない。

1点
最大介助

介護者は活動の半分以上を行う。

子どもは意味のある手伝いをする。

2点
中等度介助

介護者は活動の半分未満を行う。

3点
最小介助 介護者はときに支える。またはその活動の仕上げを手伝う程度の極わずかな介助のみ。
4点

見守り/促し/監視/準備

介護者がその活動の間に身体的介助を行わないが、言葉による指示・監視・セルフケア器具や物品の準備などをする必要がある。
5点
自立 介護者は身体的介助、または見守りを行わない。
 
 
この部分はFIMに少し似ている感じだね。

③調整尺度

20項目の複合した(複雑な)機能的活動が含まれます。

▶ より複雑な機能的活動の際に、子どもの遂行を支援するために、日常的に必要な場合のみ、周辺環境の調整について評定していきます。

▶各項目を、 N(調整なし)、C(子供用)、R(リハビリテーション器具)、E(広範な調整が必要)という4つのカテゴリーにわけて判定します。

N 調整なし
C

子ども向けの、特殊ではない調整が必要か否か。

 *一般的に子どもを対象としてつくられている市販のものなど。

R 特殊なリハビリテーション器具(自助具や福祉用具など)が必要か否か。
E 広範な調整(住宅改修など)が必要か否か。


スコアをつけていく際、空欄ゼロになるように注意してね。

その他

・初回受診時やリハビリ開始場面などで、子どもの現状把握やリハビリ計画、リハ効果の判定などを調査するため、PEDIを実施することもあります。

・3つの<測定尺度>のうち、①機能的スキル尺度②介護者による援助尺度の素点は、マニュアルに基づきそれぞれ「基準値標準スコア」「尺度化スコア」に変換されます。

③調整尺度については「頻度合計のみが、最終指標として使用可能です。

・さらに、PEDIソフトウェアの使用によってのみ、「適合スコア」が得られるようになっています。

2010 年コンピューターに適合させた新しい項目が追加された、PEDI-CAT(Pediatric Evaluation of Disability Inventory-Computer Adaptive Test)が考案されました。

PEDI-CATでは、各領域の項目数が変化し、選択肢も4段階の「難易度」評定尺度に変更されました。

・今後は、ASDなどの発達障害においても評価が進むよう、検討(信頼性や妥当性など)を進めている段階です。

 

 
PEDI の下位領域スコアと GMFCS や MACS との関連性が示唆されている報告もあったよ。
 
そうだね。1つの評価だけではなく、様々なアセスメントを通して担当のお子さんと関わっていくことで、多角的な視点で考えることができるよ。

*PEDI使用方法などの詳細のついては、下記の文献をご参照ください。

<参考文献>
・Haley, S., Coster, W., Ludlow, L., Haltiwanger, J., & Andrellos, P. (1992). Pediatric evaluation of disability (PEDI). Boston: New England Center Hospitals/PEDI Research Group.

・里宇明元, 近藤和泉, 間川博之 (監訳): PEDI子どものための能力低下評価法. 医歯薬出版, 2003 (PEDI Research Group: Pediatric Evaluation of Disability Inventory (PEDI). Development, Standardization and Administration Manual. Boston University,Boston, 1998
・Nichols, Deborah S. and J. Case-Smith. “Reliability and Validity of the Pediatric Evaluation of Disability Inventory.” Pediatric Physical Therapy 8 (1996): 15–24.
・Stephen M Haley, Maria A Fragala-Pinkham, Interpreting Change Scores of Tests and Measures Used in Physical Therapy, Physical Therapy, Volume 86, Issue 5, 1 May 2006, Pages 735–743,
・里宇明元:小児における能力低下の評価WeeFIMとPEDI.リハビリテーション医学 2004; 41: 531-539
・日本リハビリテーション医学会・監:脳性麻痺リハビリテーションガイドライン 第2版,金原出版,2014
・Öhrvall AM, Eliasson AC, Löwing K, Ödman P, Krumlinde-Sundholm L: Self-care and mobility skills in children with cerebral palsy, related to their manual ability and gross motor function classifications. Dev Med Child Neurol 2010; 52:1048-1055
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