Vineland-Ⅱ適応行動尺度の使用方法

使用方法

環境の準備:落ち着いて面談できる部屋を用意し、回答者が答えやすい空間で行います。その際、子どもが検査場面に立ち会う(参加する)ことがないようにします。

 

 
 面接中、子どもが横で遊んでいるくらいなら大丈夫だよ。
 
面談形式なので、ラポール形成(信頼関係の構築)が大切だね。

・重要なのは、半構造化面接で行うことです。

・質問形式で聞いてしまうと、潜在バイアスをつくってしまうため、自由回答で答えてもらうことで正確性が増します。


① 対象者の状態をよく知る回答者(保護者や介護者など)に半構造化面接を行います。

② 検査用紙に沿って、「生活年齢」を算出します。
 *「精神年齢」でも可

③ ②で算出した「生活年齢」に応じた項目から面談を始めます。

④ 検査項目についてオープンに話してもらいながら、各項目を「2」「1」「0」「DK」「N/O」のいずれかに〇をつけて評定していきます。
 

 
マニュアルの付録(採点基準)を参照すると、より評定しやすいよ。

<評定内容について>
2:1人で通常または習慣的にしている。
➡実際にやっていることが重要。つまり手助けや指示がなくてもできる。

1:1人で時々行動する、あるいは部分的にしている。

0:今までやったことがない、あるいは1人でまったくしない。

DK:回答者が、対象者がその行動をするかどうかわからない。
➡DKは各下位領域に2つまで。それ以上では評定できない。

N/O:項目に【注】がある場合、それに従ってN/Oとする場合がある。

 

⑤「2」に4連続「丸:チェック」がつけば、それより年齢が低い項目は全て「〇」になります。反対に「0」に4連続「丸:チェック」がつけば、それより年齢が高い項目は全て「×」となります。

⑥ 検査用紙の質問文の前にあるマークを見て、同じマークの質問の回答がまとめて(連動的に)聴取できるように、話を進めていきます。

 

 
同じマークの項目は、同じ系統の質問項目という意味なので、その項目を一気にオープンに話してもらうと、採点しやすいよ。
 
大きくひとくくりに尋ねることがコツ。

 

⑦ 各領域を部分的に実施することはできるが、適応行動総合点を算出するためには、対象児に該当する領域はすべて採点する必要があります

⑧ 採点し終わったら、マニュアルを参照しながら素点を標準得点(v評価点)へと変換していきます。

⑨ 結果、強みや弱み、パーセンタイル順位などや、各スコア同士の比較も行うことができます。

 ➡2021年以降は、有料の「Vineland-II 換算アシスタント」を使用すると時間短縮できます。

 

個別支援計画へ繋げるには?

①評価結果に基づき、適応行動の特徴を検討します。
 *知的障害のある児では、知能指数との関係をみるために、知能検査も行うことが望ましい。

②「弱み(W)」の領域について、どの項目ができていないのかを検討し、その項目ができるようになる必要性がどの程度あるのかを検討します。

③「1人で行うことが難しい行動」をできるようにするために、どのような支援が具体的に必要かを考えます。
 *採点項目で「1」がついているものを「2」へもっていく考え方。

④「強み(S)」の領域も、さらに伸ばしていくことも大切です。

不適応行動の改善への対応を検討していきます。

 

留意点など

3歳未満の場合は、いくつか実施できない領域があります。

・対象者の年齢が、最初の開始項目の年齢よりも低い場合は、実施できません。

・7歳以上だと「運動スキル領域」は同年齢の比較データがないことから、実施しないこととなっています。

 ➡これは「運動スキル領域」の項目内容が6歳の運動スキルレベルの内容だからです。

・マニュアルによれば、何らかの運動スキルの低下が疑われるような状態であれば得点を出しても構わないようですが、同年齢との比較はできません(6歳レベルとは比較できます)。

 

個人的意見

・私も臨床で使っている際に、「運動スキル領域」はもう少し年齢域を上げてほしいなと思っていましたが、他の使用者の皆さんも思っていたのか、Vineland-3(日本では未販売)からは、9歳までは運動スキル領域を測定・比較できるようになっているみたいです。

・早く「Vineland-3」も日本に来てほしいですね。

・5~6年ほど前に参加したVineland-Ⅱの研修によると、次からはICT関係(スマホやPCなど)の使用についての項目などもあるようです。確かにスマホは日常生活に欠かせませんもんね。

 

おまけ

・日本版Vineland-Ⅱは、面接フォーム(半構造化面接により評定)による評価ですが、本国には「保護者記入フォーム」という保護者が自己記入で行えるタイプや「教師評価フォーム」という基礎学力に関連する評価もあります。

・どちらも日本語版はありません。

※使用方法などの詳細については、下記の文献をお読みください。

<参考・引用文献>
・Klaiman, C. and Saulnier, C. A. (2018). Essentials of adaptive behavior assessment of neurodevelopmental disorders. Hoboken, NJ: John Wiley & Sons, Inc. (RC 570.2 S28 2018)
・伊藤大幸,谷伊織,行廣隆次,他:日本版Vineland-II適応行動尺度の開発:不適応行動尺度の信頼性・妥当性に関する報告.精神医学54:889-898,2012
・谷伊織,伊藤大幸,行廣隆次,他:日本版Vineland-II適応行動尺度の開発:適応行動尺度の項目分析と年齢による推移.精神医学55,2013
・萩原拓:WS2-1日本版Vineland-II適応行動尺度の概要, 児童青年精神医学とその近接領域, 2016, 57巻, 1号, p. 26-29
・Doll EA(1935): A genetic scale of social maturity. Am J Orthopsychiatry, 5, 180-188.・
・Sparrow SS, Cicchetti DV, Balla DA(2005):Vineland adaptive behavior scales, second edition: Survey forms manual. Minneapolis, MN: Pearson. (辻井正次,村上隆・日本版監修,黒田美保,伊藤大幸,萩原拓,染木史緒・日本版作成(2014):日本版Vineland-II適応行動尺度マニュアル.東京,日本文化科学社.)
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