治療の種類
・脳性麻痺の痙縮に対する治療としては、様々な研究が行われています。
・ゴールドスタンダードな治療について下記に述べます。
①経口抗痙縮薬 ⇦今回の記事
②整形外科的手術
③ボツリヌス療法(BTX-A;A型ボツリヌス毒素による痙縮治療)
④選択的脊髄後根切断術
⑤フェノールによる神経ブロック療法
⑥ITB療法(バクロフェン髄注療法、バクロフェン髄膜内投与療法)
⑦末梢神経縫縮術
・今回の記事では「①経口抗痙縮薬」について簡単にまとめていきます。
①経口抗痙縮薬の特徴
・身体への副作用が比較的少ないことはメリットです。
・デメリットは希望する部位…つまり、選択的に抗痙縮薬の効果をもたらすことは難しいところです。
・また、即効性に乏しく、上記の理由もあって、本来は痙縮がみられていない健側の筋力低下(筋緊張低下を含む)をきたす可能性があります。
抗痙縮薬を用いた治療
・中枢神経性の抗痙縮薬(ジアゼパム、バクロフェン、チザニジンなど)
・末梢神経性の抗痙縮薬(ダントロレンナトリウムなど)
▶ ジアゼパム
・全身性痙縮や有痛性けいれんを軽減する研究報告があります。
・長期的な使用場面では、特に若い子どもで、耐性や身体依存が発生しやすかったとの報告もあります。
➡エビデンス的には、短期的であれば使用を推奨されています。
▶ バクロフェン
・バクロフェンは経口摂取で、痙縮と他動的ROMが有意に改善されましたが、歩行機能の改善は認めなかったという報告があります。
・本来バクロフェンは、脊髄が原因となっている痙縮に対し、使用されているものであり、CP児に対する使用としては、対象を選んで使用する場合が多いです。
➡使用することを考慮してもよい(十分なエビデンスはなし)
▶ チザニジン
・CP児の痙縮や姿勢反射障害に対して、改善を認めた研究報告があります。
➡使用を勧めるエビデンスがあります。
▷ ダントロレンナトリウム
・痙縮や筋緊張改善を認めた報告や、反対に認めなかった報告も乱立しています。
➡使用に関して考慮してもよい(十分なエビデンスはなし)
<参考・引用文献>
・池田巧、栗林正明:リハビリテーション医療における痙縮治療.京一日赤医誌,第1巻1号,2018
・Gracies JM, Nance P, Elovic E, et al. Traditional pharmacological treatments for spasticity. PartII: General and regional treatments. Muscle & Nerve1997;6:92-120
・Delgado MR, Hirtz D, Aisen M, Ashwal S, Fehlings DL, McLaughlin J, et al:Practice Parameter: Pharmacologic treatment of spasticity in children and adolescents with cerebral palsy (an evidence-based review). Nuerology 2010;74: 336-343
Patel DR, Soyode O: Pharmacologic interventions for reducing spasticity in cerebral palsy.Indian J Pediatr.2005;72:869-872
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・日本リハビリテーション医学会・監:脳性麻痺リハビリテーションガイドライン 第2版,金原出版,2014