脳性麻痺
・脳性麻痺:Cerebral palsy=CPとも呼ばれます。
・受胎から新生児(生後28日まで)に生じた脳の非進行性病変を指します。
・麻痺による運動や姿勢の障害は永続的に続きますが、二次障害の進行により症状自体は変化していきます。
・感覚や認知機能、コミュニケーションや適応行動面の問題などが生じることもあります。
脳性麻痺の原因
リスクファクター
・CPの原因は、次の2点の影響が大きいといわれています。
臨床場面では?
※あくまで私見です。
*麻痺の種別としては、他に単麻痺(主に脊髄や末梢神経の障害など)、対麻痺(主に脊髄損傷や二分脊椎など)がありますが、CPとは状態的に異なります。
MRI異常所見
・約89%のCP児において、MRIによる異常所見を認めたとの報告があります。
時期として多いのはいつ?
早期産のCP児では99%、満期産のCP児でも92%のお子さんで所見を認めました。
早期産では「脳室周囲白質病変」、満期産では「びまん性軸索損傷」が多いよ
CPについての私見
・医学の発展や検査技術の発達のおかげで、脳機能の詳細を知ることができるようになり、神経発達障害の診断の質が高まってきました。
・その結果、多くの疾患は早期発見できるようになってきましたが、脳性麻痺によっては新生児期には判断できないものもあります。
・様々な検査(経頭蓋エコーや頭部MRIなど)や診察(赤ちゃんの動作観察や病歴の聴取などを含む)により、危険因子を把握することが重要となります。
・特にリハビリ関係の職種(理学療法士、作業療法士など)にとっては、原始反射やジェネラルムーブメント(GMs)などを観察・分析することが重要となります。
近年の傾向と私見
・病院や施設、領域などにもよりますが、上記にあるようにリハビリ職が最も臨床で出会うのは、痙直型両麻痺と四肢麻痺のお子さんだと思われます。
・これは医療の発達のおかげで大脳基底核が病変(核黄疸など)であるアテトーゼ型が減少傾向にあること、晩婚化や高齢出産により、低出生体重で産まれたり、何らかの原因で周産期仮死となり、結果的に低酸素脳症が増加していることなど、様々な要因が考えられています。
・実際に、私はこれまで多くの脳性麻痺のあるお子さんのリハビリに関わらせていただきましたが、痙直型両麻痺もしくは痙直型四肢麻痺のお子さんが多いです。 もちろんアテトーゼ型(四肢麻痺)や失調型のお子さんもいらっしゃいます。
・痙直型両麻痺の診断があるお子さんでも、実際に動作観察や発達スクリーニングなどを行い、姿勢や運動障害が強くみられている場合には、痙直型四肢麻痺に近いという判断になる場合もあります。
・四肢麻痺であっても麻痺の程度が比較的良好であったり、両麻痺であっても上肢の麻痺が強めにみられる際は、互いに判別が難しい場合もあります。
・脳性麻痺の原因や分類から考えなければならないことは多々ありますが、私が臨床現場で大切にしていることは、目の前の子どもが「生活場面で何ができて、何ができないのか」、そして「本人や保護者は何に困っているのか」をしっかりと確認し、本人の発達段階や将来を考えたリハビリを行っていくことです。
小児分野に興味がある療法士さんへ
・小児分野に興味があるセラピストの皆様に、事前に学んでおいてもらったほうが良いと思うことは、
①定型発達児の発達の流れや原始反射の統合について知っておくこと。
②脳性麻痺の病理学的な知識や予後予測、ゴールドスタンダードな治療・リハビリについて学んでおくこと。
③最新の治療・リハビリについて研究論文やガイドラインをしっかり頼ること。
*同時にそれだけがすべてではないことも知ること。
④子どもと楽しく、セラピーを行える関係を築くこと。そのための努力を惜しまないこと。
⑤家庭での療育、支援方法などについてご家族様と共有し、関係機関と連携していくこと。
・これらについては実際に臨床実習指導の際にも見本となって学生さんに示せるように、私自身も取り組んでおります。
・今後、このあたりのことも記事としてまとめていきたいと思っています。少しでも参考にしていただければ幸いです。
・最後までご覧いただき、ありがとうございました!
<文献>
・Executive Committee for the Definition of Cerebral Palsy (2005) by Martin Bax , Dm Frcp , Emeritus Reader In , Child Health Division Of Paediatrics
・福田恵美子ら:標準作業療法学 専門分野 発達過程作業療法学 第2版,医学書院.2014
・白木和夫、高田哲:ナースとコメディカルのための小児科学,日本小児医事出版.2016
・二宮恒夫、香美祥二:最新育児小児病学 改訂第6版,南江堂.2014