【解説】第41回 作業療法士 専門問題 午前16-20【実地問題】

 

第41回 OT AM16

問題16.頚髄損傷患者に紙を押さえるよう指示したところの写真を次に示す。この代償動作の減原因となった麻痺筋はどれか。

1.三角筋前部

2.広背筋

3.大胸筋

4.上腕三頭筋

5.橈側手根伸筋

→ → → 答え・解説はコチラをクリック ← ← ←

答え:4

問題のポイント
・机上の物を押さえる際、使用する筋肉を考えましょう。

・自分で写真のようにやってみてもわかりづらい場合は、極端に考える(大げさに考える)ことがコツです。

・例えば、この机上の紙を引っ張ってくる人がいたとして、それに負けないように押さえようとすると、どうでしょうか?

➡負けないようにしようとすると、腕全体を使って机に押し付けるように肘関節を伸ばすと思います。

➡しかし、この写真では肘伸展ではなく、肘屈曲、肩外転・軽度屈曲・内旋、前腕回内位、手はやや背屈位」といった代償動作がみられています。

1.三角筋前部:×

➡上記写真では、「肩軽度屈曲・内旋位」であり、三角筋(前部)を代償的に使用していることがわかるため×

2.広背筋:×

➡上記写真では、「肩内旋位」であり、広背筋を代償的に使用していることがわかるため×

3.大胸筋:×

➡上記写真では、「肩内旋位」であり、大胸筋を代償的に使用していることがわかるため×

4.上腕三頭筋:〇

 
紙を押さえるために、肘伸展(上腕三頭筋の収縮)ができていない(つまり活用できていない)ことがわかるため、写真の代償動作の原因は「上腕三頭筋」が使えていないことが考えられます。

5.橈側手根伸筋:×

➡上記写真では、「手関節背屈位」であり、橈側手根伸筋を代償的に使用していることがわかるため×

 

 

第41回 OT AM17

問題17.58歳の男性。第10胸椎脱臼骨折による対麻痺。1日4回の自己導尿で管理していた。受傷2年後に施行された膀胱造影の写真を次に示す。

検査結果に基づく指導で適切でないのはどれか。

ア.起き上がりは側臥位から行わせる。
イ.飲水量を1日500ml/以下に制限する。 
ウ.用手排尿によって残尿を減らす。
エ.自己導尿の回数を増やす。 
オ.夜間のカテーテル留置を検討する。

1.ア、イ

2.ア、オ

3.イ、ウ

4.ウ、エ

5.エ、オ

→ → → 答え・解説はコチラをクリック ← ← ←

答え:3(イとウ:適切でないもの)

 

この問題のポイント
・画像から、「残尿(白色)が大量にあること」とそれにより「尿管や膀胱が拡大(変形)がみられること」がわかります。

・脊髄損傷の「神経因性膀胱」により、尿管や膀胱に溜まっている(残尿)

・尿管の拡大から、膀胱や尿管で逆流している疑いが高い

 

ア.起き上がりは側臥位から行わせる:〇

腹圧がかかることで逆流を助長するため注意し、側臥位を経由して起き上がりましょう

イ.飲水量を1日500ml/以下に制限する:×

 
残尿があるから、飲む量を減らすことにはつながりません。
飲料は十分に摂取すると同時に、自己導尿の回数を増やす必要があります。

ウ.用手排尿によって残尿を減らす:×

 
用手排尿:恥骨上部を手で強く圧迫して尿を排出させる方法(クレーデ法、クレーデ排尿)は、圧迫させることが必須であり、このような逆流所見がある場合は行いません。

エ.自己導尿の回数を増やす:〇

自己導尿の回数が足りていないため、回数を増やします〇

オ.夜間のカテーテル留置を検討する:〇

➡夜間などについては、自己導尿が難しいため、カテーテルなども検討します

(ただし、カテーテル留置は尿路感染などには注意が必要です)

 

第41回 OT AM18

問題18.橈骨神経麻痺による下垂手に対してコックアップ・スプリントを作製する際に注意すべき点で正しいのはどれか。2つ選べ

1.母指と示指を対立位で固定する。

2.遠位端はⅡ~Ⅳ指MP関節よりも長くする。

3.橈骨・尺骨の茎状突起の除圧を図る。

4.ベルクロによる固定は、遠位端、近位端および手関節付近の3か所で行う。

5.手関節を中間位(背屈0°)で保持する。

→ → → 答え・解説はコチラをクリック ← ← ←

答え:3と4

橈骨神経麻痺のスプリント作成
・橈骨神経麻痺により「下垂手」となります。

・下垂手では、手関節の背屈位や手指の伸展位、母指外転位がとれなくなります。

手関節は軽度背屈位を保持します。

母指は外転位で保持します。

機能的把握のため、把持操作に邪魔にならないように調整します。

 

1.母指と示指を対立位で固定する:×

➡下垂手では母指外転筋が麻痺するため、母指は「外転位」で保持できるように調整します。

2.遠位端はⅡ~Ⅳ指MP関節よりも長くする:×

➡遠位端を長くしてしまうと、機能的な握りを邪魔してしまうため、邪魔にならないようにカットします。

3.橈骨・尺骨の茎状突起の除圧を図る:〇

 
茎状突起部分は骨が隆起しており、スプリント材に触れ続けると圧迫されてしまうため、除圧します〇

4.ベルクロによる固定は、遠位端、近位端および手関節付近の3か所で行う:〇

 
スプリントや装具は3点固定が原則です〇

5.手関節を中間位(背屈0°)で保持する:×

➡手関節が下垂してしまうことで、機能的な握りを邪魔してしまうため、軽度背屈位で保持します。

第41回 OT AM19

問題19.30歳の女性。コンピュータのプログラマーで仕事中はキーボードを操作している。右手にしびれがあり、Phalen徴候陽性。図のような萎縮が認められる。

この患者に対する指導で適切なのはどれか。

ア.キーボード操作時は手首をリストパッドの上に載せて支える。
イ.コックアップ・スプリントで安静を保つ。
ウ.キーボードの位置を手首より高くする。
エ.患部を冷やしてしびれを緩和する。
オ.夜間は上肢を下垂し負担を減らす。

1.ア、イ

2.ア、オ

3.イ、ウ

4.ウ、エ

5.エ、オ

→ → → 答え・解説はコチラをクリック ← ← ←

答え:1(ア、イ)

手根管症候群について
手根管症候群では、正中神経が圧迫されることで、Phanlen徴候陽性となることがあります。

・特に掌屈や背屈位により正中神経が圧迫され、手のしびれ母指球の萎縮猿手などがみられます。

➡このような症状は低位正中神経麻痺といいます。

 

ア.キーボード操作時は手首をリストパッドの上に載せて支える:〇

 
手首をリストパッド上に載せることで関節部を除圧できるため〇です。

イ.コックアップ・スプリントで安静を保つ:〇

 
コックアップ・スプリントは軽度背屈位で上肢の安静保持するためのスプリント装具です。
手根管症候群では背屈位自体は禁忌ですが、手関節の角度をコントロールしたスプリントの作成により、関節の安静を保つことは(一応)可能ではあるため〇です。

ウ.キーボードの位置を手首より高くする:×

➡キーボードの位置が手首より高いと、手関節背屈位でタイピングすることになるため×

エ.患部を冷やしてしびれを緩和する:×

➡炎症の急性期において冷却自体は必要な場合があるが、本症例では血流(血行)を改善し、正中神経を安静に保つことを考えると冷やすことは×

オ.夜間は上肢を下垂し負担を減らす:×

➡夜間の下垂は、血行を悪化させるため、浮腫に繋がるため×

 

第41回 OT AM20

問題20.関節リウマチの手指変形でみられないのはどれか。

→ → → 答え・解説はコチラをクリック ← ← ←

答え:2(みられないもの)

1:〇

➡選択肢1は、PIPが紡錘状に膨張しており、関節リウマチで起こることが多い。

2:×

 
選択肢2は「鷲手」で、「尺骨神経麻痺」で特徴的な手の変形であるため、関節リウマチとは関係ありません。

3:〇

➡選択肢3は、スワンネック変形

4:〇

➡選択肢4は、ボタン穴変形

5:〇

➡選択肢5は、尺側偏位

 

最新情報をチェックしよう!